任意整理と自己破産の違い

任意整理をしたいと思って弁護士に無料相談をされる方は、自己破産も検討した上で任意整理を選択される方も多いです。

借金問題を解決したいけれど任意整理と自己破産はどう違うのか悩んでいる方のために、任意整理と自己破産の違いについて解説します。

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

1.      借金問題を解決するための手段

 

 

任意整理と自己破産は、いずれも借金問題を解決するための手段です。任意整理と似た言葉として、「債務整理」という言葉がありますが、借金問題を解決するための手段を総称して債務整理と呼びます。

 

つまり、債務整理の手段として、任意整理と自己破産があることになります。

 

2.      任意整理と自己破産の違い

 

任意整理と自己破産の違いは、効果・方法・範囲・資産等の点で以下のようにまとめられます。

任意整理 自己破産
効果 借金を減額 借金が消滅
方法 貸金業者との交渉 裁判所に申立て
範囲 選択可能 全ての借金
資産 処分しない 処分する

 

2.-(1)  任意整理と自己破産の違い①:効果

 

任意整理の効果は、借金総額や返済金額を減額させることです(参考:任意整理で借金が減額できる仕組み

任意整理をしても借金が完全になくなるわけではありません。任意整理をすると借金総額や返済金額を減額した上で、借金の元本のみを3~5年程度で分割返済することになります。

 

これに対し、自己破産を行うと原則として借金が消滅します(免責)。自己破産の手続きで免責許可を得ると、借金を支払わなくて済みます。

このように借金を完全に消滅させる点で、任意整理に比べて自己破産の方が強い効果があります。他方で、免責という強い効果が認められるため、自己破産は任意整理に比べて厳格な手続きが必要であるという違いがあります。

 

2.-(2)  任意整理と自己破産の違い②:方法

 

任意整理は、弁護士と貸金業者との間で任意の交渉によって行います。交渉であるため任意整理には以下のような特徴があります。

  • 必要書類が少なく、短期間で終わる
  • 周囲にばれずに任意整理ができる
  • 話し合いにより柔軟な解決が可能

 

任意整理は、弁護士に依頼をするときにクレジットカードを渡せば、弁護士が貸金業者から必要書類を集めて交渉を行います。

そのため、周囲にばれずに借金問題を解決し易い等の点で任意整理にメリットがあります。

 

これに対し、自己破産は裁判所に申立てを行う手続きです。免責という強い効果が認められるため、審査を行うために裁判所が介入する必要があるのです。

借金の理由や生活状況を説明するために様々な書類が必要になりますし、裁判所に行く必要もあります。任意整理に比べて、自己破産は格段に負担が重いという違いがあります。

 

2.-(3)  任意整理と自己破産の違い③:範囲

 

任意整理は、どの借金を対象とするかを選べる点が自己破産と違います。

無料相談で、任意整理をしたためにお世話になった保証人に迷惑をかけたくないと話す方は少なくありません。任意整理であれば、対象を選べるため、保証人がいる借金は任意整理の対象外とする等の柔軟な対応ができます。

 

これに対し、自己破産は全ての借金が対象となります。自己破産は全ての資産と負債を明らかにした上で清算を行う手続きであるため、一部の借金だけを対象外とすることはできません。

とくに整理したい借金が決まっているような場合には、自己破産よりも任意整理の方が適切だと言えるでしょう。

 

2.-(4)  任意整理と自己破産の違い④:資産

 

任意整理と自己破産で最も大きな違いは資産に対する扱いです。

 

任意整理は、原則として、あなたが資産をどの程度持っているかは関係ありません。任意整理をしても自宅や自動車の処分を強制されることはありません。

自宅や自動車を処分したくないため、自己破産ではなく任意整理を選ばれる方も多いです。

 

これに対し、自己破産を行うとあなたの全財産を原則として処分することになります。自宅や自動車を残したまま自己破産を行うことはできません。

従って、自宅や自動車を維持したい方は、自己破産と違って任意整理を行うメリットがあると言えるでしょう。

 

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