任意整理の費用がどれぐらいかかるか不安で任意整理を弁護士や司法書士に依頼することをためらう方も少なくありません。
弁護士費用は高額なイメージがあり、借金で苦しいのに任意整理の費用を払えないと不安に思う方は多いようです。
しかし、任意整理の費用はお金がなくても支払えるように工夫されています。この記事では任意整理の費用について解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
1. 任意整理の費用はどんなものがあるか
1.-(1) 任意整理に裁判費用はかからない
借金をしたものの、生活が苦しいなどの理由で返済が滞ってしまうこともありますよね。
借金の完済が難しい場合は「自己破産するしかない」と思っている方もいます。しかし、借金問題を解決する債務整理の手段は自己破産だけではありません。
債務整理の手段である「任意整理」を行うことで自己破産をせずに借金を完済できる場合もあります。
(参考)任意整理とは
このように任意整理は自己破産と異なり裁判所を利用する手続ではありません。弁護士や裁判所は高額なイメージがありますが、任意整理は裁判所を利用しないため裁判費用はかかりません。
1.-(2) 任意整理で必要となる費用
任意整理で必要となるのは弁護士や司法書士に支払う報酬です。
任意整理は個人で行おうとしても貸金業者が応じないため、弁護士や司法書士に依頼して手続を行います。このときに弁護士や司法書士に支払う報酬が任意整理で必要な費用となります。
任意整理の費用相場は、債権者1社あたり5~6万円+減額金額の10%というのが一般的です。
これを見ると、「債権者ごとになぜ5~7万円もかかるのか」と不思議になりますよね。具体的な依頼費用の金額は各事務所によって異なるものの、費用の内訳についてはほぼ共通しています。
納得したうえで弁護士や司法書士に任意整理を依頼するためにも、費用がどのような内訳で成り立っているのかを知っておきましょう。
① 任意整理の費用(1):法律相談料は無料
弁護士や司法書士に任意整理に相談に行くと法律相談料がかかると思われるかもしれません。しかし、ほとんどの弁護士事務所では任意整理の法律相談は無料で行うことが可能です。
② 任意整理の費用(2):着手金は1社毎にかかる
着手金は弁護士や司法書士に任意整理を依頼するときに支払うお金です。任意整理は対象となる借金を選べるので、何社の任意整理を行うかによって異なります。
また、任意整理を相談していると過払い金がある可能性が分かる場合もあります。過払い金の請求ができる場合は、事務所によっては、着手金無料で依頼することが可能です。
③ 任意整理の費用(3):報酬金は任意整理成功+減額報酬
任意整理が成功すると借金総額や毎月の返済金額を減らすことができます。報酬金は、任意整理が成功したときに支払う費用です。
報酬金は任意整理が成功したこと自体について1社当たりいくら、減額できた場合に減額金額の何%という形で請求されます。
④ 任意整理の費用(4):各種手数料
任意整理を依頼するときに事務処理に要する手数料として数千円程度を請求されることがあります。
2. 任意整理の費用相場と安く抑える方法
2.-(1) 任意整理の費用相場
任意整理の費用について法律で明確に定義されているわけではありません。従って、弁護士事務所や司法書士事務所によって任意整理の費用は異なります。
しかし、任意整理を扱う事務所は非常に多く、費用を比較されることが多いため、ほとんどの事務所は似たような費用相場となっています。
具体的には任意整理の費用相場としては以下のようなものとなっています。
法律相談料 | 無料相談 |
着手金 | 1社当たり4~5万円 |
報酬金 | 任意整理に成功したとき:1社当たり1~2万円 |
借金を減額できたとき:減額金額の10% | |
手数料 | 支払代行について1回当たり1000円 |
2.-(2) 任意整理の費用についての具体例
例えば、任意整理をする前に3社から合わせて300万円借金があったとします。
任意整理によって借金を200万円にまで減額できた場合、費用相場としては「着手金4~5万円×3社+任意整理成功の報酬金1~2万円×3社+減額報酬(300万円-200万円)×10%」で25~31万円です。
任意整理で約30万円程度の費用を弁護士や司法書士に支払いますが、借金を100万円に減額できることになります。
2.-(3) 任意整理ができない場合の費用はどうなる?
ただし、任意整理に貸金業者が応じない場合でも減額報酬や成功報酬以外は支払わなければならないケースもあります。
もっとも、任意整理に強い弁護士に相談すれば、任意整理の見込みを教えて貰うことができます。任意整理の依頼をしても、貸金業者が全く応じずに失敗することは、ほとんど考えられないのでご安心ください。
(参考)任意整理に貸金業者が応じないため失敗するリスクが少ない理由
任意整理に失敗して弁護士費用倒れになるのが不安なときは、依頼する前に無料相談で詳しくご質問ください。
そもそも減額を実現できそうか、できそうならいくら減額できるのかを任意整理に強い弁護士にしっかり相談し、任意整理を依頼するかどうか決めましょう。
2.-(4) 任意整理の費用を安く抑える方法:弁護士と司法書士で費用相場は違うか?
任意整理の費用を安くするためには司法書士に依頼する方が良いと言われることもあります。
たしかに案件分野によっては弁護士と司法書士で費用相場が異なるものがあります。しかし、任意整理に関しては弁護士と司法書士で費用相場が大きく異なることはないようです。
なぜなら、任意整理の弁護士報酬については日本弁護士連合会の規則(債務整理事件処理の規律を定める規程)で上限規制があるため、あまりに高額な弁護士報酬を請求できないからです。
また、弁護士も司法書士も任意整理を扱う事務所が多数あるため、費用相場に比べて高額な報酬だと比較をされて顧客を得られない競争原理が働いているからです。
従って、任意整理の費用はほとんど費用相場通りであり、格安に依頼できる裏技のようなものはありません。任意整理に対する知識が豊富かや相性が合うかで事務所選びをするのが良いでしょう。
3. お金がなくて費用が払えなくても任意整理を依頼できる理由
「そもそも借金が返済できない状況なのに、弁護士に依頼する費用なんて払えないよ」と思う人も多いでしょう。
しかし、実際には返済に困って弁護士や司法書士に任意整理を依頼する方は珍しくありません。実は、お金がなくても任意整理を依頼できるさまざまな方法があるのです。
3.-(1) 任意整理の費用は一度に支払う必要はない
借金総額や債権者数によっては、着手金や減額報酬などの費用が高額になってしまうこともあります。借金返済で苦しいのに20万円から30万円もの費用を一度に支払うのは難しいでしょう。
借金返済に苦しんでいる人はそもそもお金が十分にないため、仮に借金を大きく減額できても一括で費用を支払えないケースも多いです。このため、任意整理の費用について、分割払いや後払いができるようにしている事務所がほとんどです。
任意整理の費用は一度に支払う必要がないため、手元にお金がなくても支払いができます。
3.-(2) 受任通知で借金返済をストップして費用をためる
弁護士や司法書士は、任意整理を依頼される債権者に対して「受任通知」を発送します。
受任通知とは、債務者の任意整理を弁護士などが受任したことを債権者に知らせる書類のことです。
受任通知を受け取った債権者は債務者への督促や連絡を即刻止めなければなりません。これは法律で定められていることであり、法的効力も持っているため債権者は従わざるを得ないのです。
従って、受任通知を送付すれば債権者から取立てがストップし、借金を返済する必要がありません。任意整理で貸金業者と和解するまでの期間は3か月から6か月程度ですが、この間は借金返済をストップし、その代わりに任意整理の費用を支払う方法が取られます。
受任通知で返済を止めることができれば、これまで返済に回していたお金を任意整理費用に充て、借金の減額を目指せるというわけです。
3.-(3) 任意整理で費用を上回る支払金額の減額効果
分割払いや受任通知による返済ストップによって費用が支払えても、結局は任意整理の費用だけ支払金額が増えて生活は楽にならないと思われるかもしれません。
しかし、任意整理をすれば費用を考慮しても支払金額を減らすことが見込める場合がほとんどです。
任意整理で借金を減らせる仕組みには以下のようなものがあります。
- グレーゾーン金利の引き直し計算
- 遅延損害金や将来利息のカット
- 長期分割払いによる返済金額の減額
利息制限法の上限利率で借金をしているような場合はグレーゾーン金利の引き直し計算で借金を減額することはできません。しかし、遅延損害金や将来利息のカットにより支払金額を大きく減らすことができます。
例えば、3社から合わせて300万円の借金(利率15%)があるとします。仮に毎月合計9万円を返済しても、借金返済まで約3年8か月かかり合計で約390万円の支払いをすることになります。
しかし、任意整理をすれば、毎月の返済金額が約8万3000円程度になり、返済期間も3年に減らすことができます。しかも、将来利息のカットをするため支払総額は300万円で済みます。
つまり、任意整理前は合計390万円の支払総額だったのが、任意整理をすれば任意整理費用に30万円かかっても支払総額は330万円となります。任意整理をすれば費用を上回る支払総額の減額効果は非常に大きいと言えるでしょう。
(毎月9万円返済と毎月6万円返済をしている場合の支払総額)
任意整理をする前 | 任意整理をした後 | |||
元本・利息 | 300万円(年利15%) | 300万円(将来利息カット) | ||
返済金額 | 9万円 | 6万円 | 約8万3000円 | 5万円 |
返済期間 | 約3年8か月 | 約6年7か月 | 3年 | 5年 |
任意整理費用 | なし | 約25~30万円 | ||
支払総額 | 約390万円 | 約470万円 | 約325万円~330万円 |
4. 手元にお金がなくても任意整理の費用は支払える:任意整理で支払総額を減らす
任意整理は、借金の返済に追われるあなたを救ってくれる有意義な手段です。
手元にお金がなくても、分割払いや受任通知などを利用すれば費用をまかなえることもあるので、まずは任意整理に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。