結婚を意識するようになり本気で借金問題を解決しようと考える人は少なくありません。
結婚前に任意整理をしたことで結婚生活に悪影響がないか不安に思って任意整理に踏み切れないというご相談を受けすることもあります。
そこで、この記事では結婚前の任意整理は結婚生活にどれくらい影響があるのか、メリットとデメリットもあわせて解説していきます。
1. 任意整理とはどのような解決方法か
1.-(1) 任意整理の特徴
任意整理とは、借金の利息部分を大幅にカットすることで借金総額や毎月の返済金額を減らして借金完済を目指す方法のことです。
借金問題を解決するための債務整理には、任意整理以外に自己破産や個人再生などがあります。
自己破産や個人再生は裁判所から許可をもらうことで成立するため、申し立てが必要です。さらに、裁判所から免責決定がなされれば官報に掲載されることになり、周囲に知られやすいというリスクもともないます。
しかし、任意整理なら裁判所を通さずにできますし、官報に掲載される心配もありません。裁判所を使わずに貸金業者との交渉によりソフトに借金問題を解決する手段と言えるでしょう。
自己破産や個人再生をすると婚約に悪影響が思うと考えて、こっそり任意整理をすることを選択する人もいます。
(参考)任意整理とは
1.-(2) 任意整理の流れ
任意整理の一般的な流れとしては、まず債権者に取引履歴の開示を請求します。取引履歴が届いたらこれをもとに利息の引き直し計算を行うことで借金総額を減らせることがあります。
借金総額を減らせないときでも、毎月の生活に要する費用を踏まえて、どの程度の支払いであれば、どのぐらいの期間で無理なく借金返済ができるかを考えて返済計画を立てます。
返済計画を立てるときに結婚を考えてるのであれば、結婚生活と借金返済が両立できるかを考えておくべきです。
借金の返済計画を立てた上で貸金業者と和解交渉を行います。最終的に和解が成立すれば、借金の元本を返済計画に従って分割払いして完済を目指します。
過払い金返還請求はすでに支払った利息の払い過ぎた分を請求するというものですが、任意整理はこれから支払う利息を減額してもらうという違いがあります。
1.-(3) 任意整理をするための手段
任意整理は裁判所を通さないため個人でも行うことが可能と思われるかもしれません。自分の交渉力に自信があるため自分で任意整理行おうとする人もいます。
しかし、債務者の直接交渉に応じる金融機関は少なく、失敗する可能性も高いといえます。そのため自分で任意整理をするのは一般的ではありません。
一般的な任意整理の手段は、弁護士に依頼する方法です。貸金業者は任意整理に弁護士が介入するのに慣れているため、弁護士が出てくればすんなり任意整理に応じてくれるからです。
任意整理を弁護士に任せれば概ね3か月から半年程度待っているだけで弁護士が任意整理を完了させてくれます。
任意整理については弁護士は基本的に無料相談を実施しているので、もし結婚を意識して借金問題を解決しようと思うなら一度は無料相談することをおすすめします。
2. 任意整理を行うメリットとデメリットは?
2.-(1) 任意整理を行うメリット
一番のメリットは債務総額や毎月の返済金額を抑えるため生活にゆとりが出ることです。
借金総額がどのぐらい減るかは、利率や返済期間によって違ってきます。
例えばフリーローンやクレジットカードのリボ払い、キャッシングなどを長く利用している場合には、利息の総額が元金を超えて過払い金を請求できることもあります。
カードローンなどもそうですが、月々の返済額が1万円を切るような低額のコースだと一見少ない返済額のように感じます。ところが、その分利息に充当される金額の割合が大きくなるのが特徴で、実際には元金はほとんど返済できていないこともあるのです。
数千円の返済を何本も抱えているようなら利息しか払っていない可能性は高いといえます。何年も返済していても借金が減らないようなケースでも、任意整理をすれば将来の利息をカットできて全額を借金の元本返済に充てられるため楽に早く完済することが可能です。
結婚生活を本気で考えるようになると将来の生活や子どものために貯金をしたいと思われるかもしれません。しかし、借金の利息ばかりを返済するような生活では貯金はできません。
任意整理をして、まずはきちんと借金を完済することによって、結婚生活のために貯金ができるようになるのです。
2.-(2) 任意整理を行うデメリット
他方で、任に整理をするとデメリットがあることもたしかです。
任意整理を行えば、一定期間信用情報機関にその事実が記録されます。一般的にブラックリストと呼ばれているものです。任意整理の事実が信用情報機関に記録されている間は新たにクレジットカードなどを申し込むことは難しいでしょう。
なお、任意整理をしても結婚相手はブラックリストに登録されないので、配偶者がクレジットカードを作ることは可能です。
任意整理のデメリットについての詳細は下記記事をご覧ください。
(参考)任意整理のデメリット よく質問される5項目と特定調停との違いを解説
3. 結婚生活後のローンに対する任意整理の影響
3.-(1) 自分名義で住宅ローンやカーローンを組めなくなる
任意整理をするとブラックリストの掲載対象として扱われます。そのため、その事実が信用情報機関に記録されている間は住宅ローンやカーローンなどの審査は通らないと考えた方がいいでしょう。
結婚の予定があり、さらに結婚後に住居の購入を検討しているならやや不利な状態かもしれません。
しかし、ローンなどの審査が通らないのはブラックリストとして扱われる期間だけの問題です。
任意整理をした場合、通常は5年ほど信用情報機関に記録されます。長い場合でも7年ほどです。その期間を過ぎてしまえば記録は消されるため、ローンの審査に影響する心配はありません。
心配な場合にはローンの審査を通す前に信用情報機関に開示請求をしてみましょう。自分がブラックリストから外れているかどうかも確認ができます。
結婚を考えるのであれば、早めに任意整理をした方が良いでしょう。
3.-(2) 結婚相手がローン名義人になることはできる
なお、自分が任意整理をすることで結婚相手がとローンが組めない場合もあるのではないか、と不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、自分が任意整理をしても結婚相手の名義だけなら住宅ローンを組むことができます。その場合は結婚相手の収入をもとに返済能力などが審査されることになります。
結婚しても債務整理の事実については世帯として扱われるわけではなく、それぞれの問題として扱われるのでご安心ください。
あなたが女性で婚約者に借金を隠しているようなケースであれば、住宅ローンやカーローンは婚約者名義で組むことが想定されます。そのような見込みがあるのであれば、婚約者に任意整理をしたことを知られないまま済む可能性は高いと言えるでしょう。
4. 任意整理がばれたときは離婚理由になる?
4.-(1) 結婚前に任意整理をしたことを告げるべきか
任意整理が与える結婚後の影響について気になる人もいるのではないでしょうか。自分が任意整理をすることで結婚相手にも影響が出ないかどうか、心配になる人は多いものです。
とくに結婚後に任意整理をしたことがばれても離婚理由にはならないのか気にする人もいるでしょう。そのため「結婚前に任意整理をしたことは伝えるべき?」という疑問を抱く人もいます。
4.-(2) 離婚理由になるとは考えにくい
しかし、結婚前に借金があったことや任意整理をしたことが、それだけで離婚理由になることは考えにくいです。従って、借金の存在や任意整理について隠したままで結婚することも考えられます。
他方で、離婚理由にならないものの、借金は一般的に考えて好ましいことではありません。結婚後に借金があったことや任意整理をしたことを隠していたとバレると不信感を持たれるかもしれません。
そのため、結婚してから事実が発覚してお互いが気まずい思いをするより、結婚前に話しておくことも考えられます。
むしろ、結婚前に正当な手段を使って返済を優先したという方向で説明できれば、印象を悪くせずに理解を得ることも可能でしょう。
結婚生活のために任意整理で借金問題を解決する
婚約者や結婚相手に借金を隠したままでいることは難しいです。長年借金を返済しても、利息を支払っているだけで借金元本が減っていないことも少なくありません。
借金が残ったままだと将来の生活や子どものために貯金することも難しいです。結婚を意識するようになったら本気で借金問題を解決する良い機会です。
借金問題を解決する方法はいくつかありますが、任意整理は自己破産や個人再生に比べてソフトな解決手段です。結婚を意識して任意整理をする人も少なくありません。
任意整理をすると結婚後に自分名義の住宅ローンやカーローンを組みにくくなります。但し、それはブラックリストに載っている5~7年程度だけです。
結婚生活への悪影響を減らしたいのであれば、できるだけ早めに任意整理をした方が有利だと言えるでしょう。
借金や任意整理について結婚前に話すかは悩むところです。
隠していてもそれだけで離婚理由になるとは考えにくいため隠すことも考えられます。他方で結婚のために借金問題を解決したと上手く説明できれば印象は悪くないかもしれません。
任意整理を婚約者にばれずに進められるか、結婚後の生活にできるだけ影響がないように任意整理ができるか等は弁護士に相談することをおすすめします。借金問題は無料で法律相談ができるので、結婚を意識するようになったら一度は任意整理に強い弁護士に無料相談することをおすすめします。